世界自然遺産に登録された生物多様性を守る奇跡の楽園

 2021年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が、世界自然遺産に登録されました。登録の決め手は、独自に進化した希少な動植物が多く生息・生育する「生物多様性」。奄美大島と徳之島に生息する両生類の約9割、陸生哺乳類と爬虫類の約6割は、ここでしか見られない固有種です。亜熱帯動植物の森「金作原」や住用のマングローブには、生きた化石と言われる巨大なヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物が茂り、天然記念物のルリカケスやアマミノクロウサギなどの稀少生物が生息しています。

【世界遺産とは】

 世界遺産とは人類共有の財産として未来へ伝えていくべく保護・保全が定められた文化財や自然などのことです。ユネスコにより、世界遺産条約に基づいて登録されます。世界遺産には「文化遺産」、「自然遺産」、「複合遺産」の3つの種類があり、「自然遺産」は、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地などとなっています。

世界自然遺産の島を巡るサステナブルな旅
奄美の自然と伝統を未来につなぐために

昔から独自の自然と伝統を受け継いできた奄美大島。そこには、ありのままを受け入れながら暮らす人々の姿がありました。
これから未来に向けて何を残していきたいか、「自然」と「伝統」を受け継ぐ地元出身のお二人にお話をお伺いしました。

奄美の自然と風、人との交流を楽しめる
「Eバイク」に乗って、ゆったり島時間を。

環境にも体力にもやさしいEバイクで島巡り

 「奄美の自然で笑顔を届けたい」という想いで、奄美の海やマングローブでのアクティビティを提供しているアマニコ。世界自然遺産に登録された2021年からは、新たに電動アシスト付きマウンテンバイク、通称「Eバイク」も導入し、手つかずの自然を間近に感じられるツアーを実施しています。
 「車社会の奄美では観光するにもレンタカーが必要です。世界自然遺産登録による観光客の増加に伴い、渋滞も増えると思いました。そこで、新しい島の巡り方として自転車がいいのではと考えたんです」。そう語るのは、アマニコ代表の白畑瞬さん。
 元々、一部の観光客たちはロードバイクに乗っていたようですが、Eバイクなら体力に自信のない人でも峠を登ったりするなど、楽しく島を巡れると考えたそうです。

世界に認められた自然を間近で感じられる旅

 現在、奄美大島全体でもEバイクの普及に取り組んでいます。民間におけるEバイク導入の先駆けだったアマニコは、自治体から相談を受けたり、役場と一緒にコースマップを作ったりしています。普及が進むEバイクの魅力について、白畑さんは次のように語ります。
 「車よりも島時間を楽しめるのは、Eバイクならではの魅力です。その土地の風や、通り過ぎる人との会話など、地元に密着しながらゆっくりと巡ることができますよ」。
 坂を登っていると、地元の人が「大丈夫?」と声をかけてくれるのだそう。これは何も特別なことではなく、奄美では知らない人でも声をかけるのは日常風景。峠が険しいことを地元の人は知っているので、それを越えて来るとみんな敬意を表するそうです。普通の自転車なら立ち漕ぎでも登れないような峠でも、Eバイクなら座ったまま息も上がらずスイスイと峠を越せます。
 魅力たっぷりのEバイクで巡る奄美大島の自然。生まれも育ちもこの島という白畑さんにとっても、やはり奄美の自然は特別だといいます。「海と山にはいつも敬意を払って入るようにしています。大自然はとても素晴らしいものだけど、同時に『怖さ』もあるもの。常に謙虚な気持ちにさせてくれるのが、奄美の自然です」。

アマニコ代表の白畑さん。自然を身近に感じられるさまざまなアクティビティを提供している。

 世界自然遺産に登録されたことで何か特別に変わったことはないものの、それでも誇らしい気持ちは増したといいます。奄美の生態系を大切にしていこうという想いや自然の奥深さ、そしてその価値を世界が認めてくれたことは、島の人々にとっても自信につながったそうです。「幼少の頃は、離島というだけで少し自信が持てなかったりすることもありました。でも今はこの島を心から誇りに思っていますし、前を向く生き方につながっていると思います」。
 そんな白畑さんは今、カヌーで島と島とを結びながら交流する取り組みを新たに始めています。2022年の夏は、100km離れている宝島から奄美大島まで、6人乗りのカヌーで9時間かけて渡ったそうです。「奄美群島が日本に復帰して70周年となる2023年は、さらに距離を伸ばして屋久島そして本土鹿児島までカヌーでつなげたい」と白畑さん。
 さらに現在、白畑さんは鹿児島市内で新たなショップを展開し、市内でもEバイクをレンタルしています。鹿児島の観光地をEバイクで巡り、そのあとフェリーにEバイクと一緒に乗り込んで今度は奄美を巡る。本土と奄美をEバイクとフェリーで結ぶ新しい旅のカタチに期待が集まります。

Eバイクには折りたたみを含めていくつかの種類があり、乗る人に合わせて選べるようになっています。おすすめは、大浜海浜公園に行ったあとに森へ向かう約2時間30分のコース。
スタッフさんの案内を聞きながら安全運転で奄美大島を巡りましょう。

  • 9:00

    ツアーの流れを説明、レクチャー

  • 9:15

    ショップからスタート

    美しい海を眺めながら大浜海浜公園へ
  • 9:45

    奄美中央林道へ向かう旧道へ

    立ち止まって写真を撮ったり、動植物の解説を聞きながら森林浴を楽しみます
  • 10:10

    涼しい沢で一休み

  • 10:30

    再び林道を辿り帰路へ

  • 11:30

    ショップ到着・解散

【フェリーなら大きな荷物も運べる】

フェリーなら自転車ごと移動が可能に!周遊できるのも船旅ならではの楽しさです。自転車の他にもサーフボードなど大きな荷物を運べます。

自然を感じるネイチャースポット

自然のスペシャリスト!認定エコツアーガイド

奄美大島の金作原は自然環境の保全のため、認定エコツアーガイドの同行が必要。プロのガイドの案内があれば、稀少な動植物を見つけながら散策が楽しめる。ガイドの運転する車で夜の森を探索するナイトツアーでは、アマミノクロウサギなど夜行性の生物を見ることができる。

世界屈指のホエールウォッチングの聖地 徳之島

出産・子育てのために暖かい日本の海にやってくるザトウクジラ。奄美群島、特に徳之島周辺では12〜3月くらいまで見ることができ、回遊するクジラたちを船上から探し、観察するホエールウォッチングが人気。

自然への知識を深められる おすすめスポット

国内屈指のマングローブをカヌーで楽しむ

黒潮の森マングローブパーク

奄美大島の自然の価値と守るためのルールを学ぶ

奄美大島世界遺産センター
  • 【住 所】
    奄美市住用町大字石原467-1
  • 【問合せ】
    0997692281
  • 【営業時間】
    9:00~17:00(最終入館16:30)
  • 【休館日】
    平日木曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
  • 【WEB】
  • 【GoogleMap】

奄美群島の島ごとの特徴や生態系を紹介

奄美野生生物保護センター

奄美の海が体感できる博物館

奄美海洋展示館
  • 【住 所】
    奄美市名瀬小宿大浜701番地1
  • 【問合せ】
    0997-55-6000
  • 【営業時間】
    9:30~18:00(入館は17:30まで)
  • 【休館日】
    年末年始(12/31~1/1)
    メンテナンスの為の休館日あり(6月・12月の中旬3日間)
  • 【WEB】
  • 【GoogleMap】