<Profile>
こばやしのぞみ 旅作家・元編集者。出版社を退社し2011年末から世界放浪の旅をはじめ、2014年『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。
また、2014年に瀬戸内海の「讃岐広島」で島の人たちとともに『島プロジェクト』を立ち上げる。以降、離島コンテンツのアドバイザーとして活動し、2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。
著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など多数。新刊に『旅が教えてくれた人生と仕事に役立つ100の気づき』(産業編集センター)がある。
現在女性誌『CLASSY.』や産経新聞(「島を歩く、日本を見る」隔週金曜/生活面)などで連載中。
[Officeひるねこ HP]
https://www.officehiruneko.jp/
奄美大島をハブ港として、魅力度高い
周辺の島へも行ってみるべき!
奄美群島は、奄美大島を中心として、喜界島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖之永良部島、与論島と、8つの有人離島で構成されています。
鹿児島本土と沖縄県の間に位置するため、琉球と大和の融和や融合の地として歴史を刻み、日本の近代化や先の大戦を支える大切な要衝とされてきました。
奄美群島に恋すること10年以上の私は、島それぞれの魅力に幾度となく出会いました。幾星霜のときが生み出し、育まれた文化や島の暮らしはもちろん、海の色も、地質や地形も、家並みの景観も、島の人の性格も、どの島も異なります。一方で共通するのは、スロウな時の流れとやさしい自然の音、そして船に乗れば行けるということ。
県外からの奄美群島の旅は、主な玄関口は奄美大島です。
奄美大島の名瀬をハブ港として、奄美群島の各島へ、マリックスラインやマルエーフェリー、奄美海運などのフェリーが航行しています。船便の時刻を調べ、乗り継いで行けば、週末だけでも2島、ちょこっとお休みをプラスすれば3島と行けます。
船に乗って、奄美群島の深淵が広がる島々に行ってみましょう。
きっと、海外旅行よりも遠くへ来たような、週末だけとは思えないような、冒険の時間が待っているはずです!
おすすめのモデルコース
~奄美大島・加計呂麻島・喜界島~
<2泊3日で奄美大島・加計呂麻島の旅>
【1日目】 奄美大島
羽田発
名瀬(奄美大島)着
奄美大島泊
【2日目】
フェリーかけろま
古仁屋港(奄美大島)→瀬相港or 生間港(加計呂麻島)
加計呂麻島泊
【3日目】
フェリーかけろま
瀬相港or 生間港(加計呂麻島)→古仁屋港(奄美大島)
古仁屋→奄美空港
<さらに長期休暇で+喜界島へ!>
【3日目】
フェリーかけろま
瀬相港or 生間港(加計呂麻島)→古仁屋港(奄美大島)
フェリーあまみ・フェリーきかい
名瀬港(奄美大島)→湾港(喜界島)
【4日目】
喜界島観光
喜界島泊
【5日目】
喜界島空港→鹿児島空港
※上記モデルプランは参考例です。実際の運行状況や時刻表をご確認の上、ご予約ください。
奄美大島編
~大自然と街をどちらも楽しめる!~
日本の離島で最大級の大きさを誇る奄美大島。手付かずの自然が残り、亜熱帯性植物がすくすくと葉を広げ、あたかも南国の島という印象がぴったり。
空港がある島北部は、抜けるような青い空の下でサトウキビ畑が広がり牧歌的です。
南部には日本で2番目の規模を誇るマングローブ原生林があり、カヌー体験が人気。
島の中心地で離島への船が発着する名瀬は、飲食店やホテルが多く滞在の拠点に便利。時間があれば島三味線を習ってみたり、町歩きも楽しいです。
翌日早朝から加計呂麻島へ行くのならば、最南端の古仁屋で泊まるのもオススメ。
加計呂麻島編
~何もせずとも心が満たされる癒しの島~
初めて奄美群島へ来たとき、加計呂麻島へ船で渡りました。その後、何度も通うようになった大好きな島。大きな理由は2つ。
1つは、あまりにも神秘的で美しい海が広がるから。奄美大島南部の古仁屋港から「フェリーかけろま」で加計呂麻島へ渡るとき、海の色のグラデーションが美しくて感動します。華やかだけど、落ち着いた美しい色彩。たった20分ほどの船旅は、海の絶景を楽しむクルージングのようです。
「カケロマブルー」とも称される海ですが、白いサンゴの浜に島一番の青さを讃える実久(さねく)は、「サネクブルー」とも言われています。
とはいえ私の印象は、島の集落ごとに海の色は違って、どこも比べようもなく素晴らしいです。自分が好きな「ブルー」を見つけてみるのも素敵です。
ちなみに私のお気に入りは、勢里(せり)の海。浜に近い手前が黄緑で、沖へ行くほど深い青へと変化する幻想的な色彩です。
ただ海を眺めてぼうっとするだけで、癒されたり、嬉しくなったり、切なくなったり、自分の心と素直に向き合える良い時間を過ごせます。
2つ目は、島に会いたい人がいるから。
私の場合、初めて加計呂麻島で泊まった宿との出会いで、すっかり女将さんの魅力にハマり、以降何度も「会いたくて」行っています。
船旅で、「ああ、素敵だなあ」といつも感じるのは、宿の人が港まで送迎してくれるときの出会い(再会)と別れのひととき。
島へ向かう船が港に近づくと、迎えに来てくれる女将さんが見えて、嬉しくて手を振ってしまいます。帰るときは、「また来ま~す!」とお互い見えなくなるまで別れを惜しんで。
宿の人が単なる宿泊施設のスタッフさんではなくなり、「島で会いたい人」になるのは素敵なことです。
奄美群島は気さくで、心を開けば、親身になってくれる方が多いと感じます。いっそう島旅・船旅を楽しむためにも、「通う旅」をオススメします!
喜界島編
~多彩な顔をもつ、行くほど面白くなる島~
喜界島は、サンゴ礁が隆起してできた島なので、地質や地形は、山が多くリアス式海岸が特徴的な奄美大島や加計呂麻島と大きく異なります。
第一印象は柔らかい雰囲気。平地がちで山が低いので、空がとても広く感じられます。
集落では、琉球の文化であるサンゴの石垣が大規模に現存されています。沖縄県を含めてほとんど見られなくなっている景観で、集落を歩くだけでも異国(島)情緒たっぷりです。
島にハブが生息しないため、保存状態がよいのも理由のひとつですが、島の人たちの郷土愛を感じられます。
郷土愛は、言語保存活動にも通じています。
喜界島の言語は、2009年に日本の消滅危機言語としてユネスコに指定されました。保存活動の一つとして、島のバス停には「喜界島方言」で駅名が書かれているのでお見逃しなく!
一方で、喜界島は島の名前からは想像できないほどの切ない歴史が残ります。
先の大戦で、喜界島は鹿児島本土と沖縄県の中間に位置するため、沖縄防衛の中継基地として海軍航空基地が作られました。特攻機の整備、給油地でもあり、島中あちこちに戦跡が見られます。
空港の周りには、「特攻花」と呼ばれるテンニンギクが咲き誇ります。
これは、特攻隊員が飛行する際に、島の人たちがテンニンギクの花束を贈ったそうです。空から種が落ちたため、空港の周りに根付いたとか。
もちろん現在は、サトウキビ畑が島を覆うように広がり、とてものどかなで穏やかな雰囲気です。パパイヤやパッションフルーツなど、南国の果実が多く実るのも喜界島。
島を知れば知るほど、その奥行きの深さに驚く、魅力的な島です。